19-Jun-2026 水のぬれを支配する「線張力」の起源を解明――接触線での水分子構造の崩壊が符号反転を生む―― Institute of Industrial Science, The University of Tokyo Peer-Reviewed Publication 東京大学 生産技術研究所 着霜制御サイエンス社会連携研究部門(研究当時)/同大学 先端科学技術研究センターの田中 肇 特任研究員(東京大学名誉教授)と 東京大学大学 生産技術研究所 着霜制御サイエンス社会連携研究部門(研究当時)/同大学 先端科学技術研究センターのモイド モハド 特任研究員の研究グループは、水滴・固体・気体の境界線に働く「線張力」の微視的起源を、分子レベルで明らかにしました。 線張力は表面化学だけで決まるのではなく、接触線での水分子の四面体構造の崩壊によって大きさだけでなく符号まで反転することを示しました。 さらに、親水性基板上に形成された二分子層氷が、構造ミスマッチのために見かけ上疎水的に振る舞うことを見出し、ぬれの制御に新たな分子設計指針を与えました。 Journal Nature Physics
18-Jun-2026 計算科学はAIの世界に適応しなければならない American Association for the Advancement of Science (AAAS) Reports and Proceedings 長年にわたり、計算科学コミュニティがコンピューティングの革新を推進してきたが、もはやそれは不可能である。今日ではAIがテクノロジーの世界を支配しているという新たな現実を同コミュニティは受け入れなければならない、とJack DongarraらはPolicy Forumで述べている。AIとシミュレーションを統合すべきであり、またエネルギーが主要な設計制約になっていることから、エネルギー効率に優れた手法およびシステムに焦点を合わせるべきである。速やかに進展させるため、著者らは初期の「実用最小限の」ワークフロー形式ベンチマーク一式を提案している。これらのワークフローの一部として、データとモデルは「貴重な知的財産」であり、さらにそれらは「将来の科学的レバレッジへの投資である」と著者らは述べている。Dongarraらは、計算科学とAIの両方に利益をもたらす新しい基盤を築くための「ムーンショット」を提案している。 Journal Science
18-Jun-2026 ウクライナでの戦争に反応し、野生生物の活動パターンが変化していた American Association for the Advancement of Science (AAAS) Peer-Reviewed Publication ウクライナの研究者らは自動撮影カメラを用いて、2022年(ロシアによる占領後)と2021年の同時期(紛争前)の状況を比較し、武力紛争の野生生物への影響を調査した。彼らは、哺乳動物種が夜間活動を減らすなど行動を調整して、武力紛争に反応していたと報告している。これらの結果は、こういった事象に対する野生生物の即時反応についての貴重な知見であるとともに、自動撮影カメラを用いて戦争の生態学的影響を定量化できることも強調している。武力紛争は巻き込まれた人間にとって恐怖である。野生生物にとってもまた、有害である。しかし、アクセスの制限や危険性を考えると、そういった紛争の影響を明らかにするのは難しい。Svitlana Kudrenkoらは今回、既に運用されていた自動撮影カメラを活用して、ロシアによるウクライナ侵攻、特にチェルノブイリ立入禁止区の占領による野生生物への影響を明らかにすることができた。彼らは、特に紛争が激化している時には活動が減るなど、紛争がこの地域の哺乳類に明らかな影響を及ぼしていることを発見した。そういった影響から、政情不安は直接巻き込まれる人間に害を及ぼすにとどまらないことが確認された。 研究インテグリティ関連の優先事項にご興味のある記者の方へ:KudrenkoはSciPakで次のように述べました。「発展途上国における現地の研究者に対する認識を高めることが優先事項です。」 Journal Science
17-Jun-2026 天文学新時代へ! 宇宙論的距離におけるマルチメッセンジャー天文学の新たな展開 ―重力レンズ効果が解き明かした、約110億年前の爆発的な星形成活動とニュートリノのつながり― National Institutes of Natural Sciences Peer-Reviewed Publication アルマ望遠鏡などを用いた観測により、高エネルギーニュートリノの到来方向に、約110億年前の宇宙に存在する極めて明るい銀河「シャドウ・ブラスター」(Shadow Blaster)が発見されました。さらに、複数の波長域による観測から、ブラックホール活動ではなく、星形成活動がニュートリノ放射に寄与していることも特定されました。まだ解明されていないニュートリノの起源にマルチメッセンジャー天文学で迫る、画期的な観測的証拠です。 Journal Nature Astronomy Funder Japan Society for the Promotion of Science, TI-FRIS
17-Jun-2026 MDPI、全投稿論文を対象にAI研究公正チェックを導入 MDPI AG Business Announcement オープンアクセス学術出版社のMDPIは本日、自社開発のAI研究公正チェックシステム「Ethicality(エシカリティ)」の本格運用を開始したと発表しました。同システムはすでに稼働しており、MDPIのジャーナルに投稿される全論文を自動でスクリーニングしています。
17-Jun-2026 新型High-NA(高開口数)リソグラフィーが、先端半導体チップに革命をもたらす可能性 Okinawa Institute of Science and Technology (OIST) Graduate University Peer-Reviewed Publication 6月12日、『Journal of Micro/Nanopatterning, Materials, and Metrology』(JM3)誌に掲載された論文において、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の新竹 積教授は、高開口数(High-NA)EUVリソグラフィーで使用される照明システムおよびプロジェクターの抜本的な再設計につき報告しました。詳細な数値シミュレーションの結果、これまで回避できないと信じられていた光学的な悪影響(いわゆる「マスク3D」効果)を排除し、さらに解像度を向上させ、現在のEUV露光装置よりも小型で低コスト、低消費電力の露光装置が実現できることを示しました。 Journal Journal of Micro/Nanopatterning Materials and Metrology
15-Jun-2026 初期宇宙の銀河から中性酸素の輝線を初検出 Chiba University Peer-Reviewed Publication 千葉大学先進科学センターの札本佳伸特任助教、大栗真宗教授、早稲田大学の井上昭雄教授、筑波大学の橋本拓也助教、広島大学の稲見華恵准教授らの国際研究チームは、アルマ望遠鏡注1)を用いて、宇宙誕生から約7億〜8億年後の銀河4天体から、中性酸素が放つ輝線である「[O I] 145㎛(マイクロメートル)」注2)の検出に成功しました。これは、典型的な星形成銀河の冷たい中性ガス注3)からの直接的な信号としては、これまでで最も遠方の検出例となります。中性ガスは星の直接の材料でありながら、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)注4)など可視・近赤外線の望遠鏡では捉えにくいため、アルマ望遠鏡ならではの観測です。今回の研究成果は、初期宇宙の銀河で星がどのように生まれ育ったかを解明するうえで、新たな観測の窓を開くものです。本研究成果は、2026年6月15日(米国東部時間)に学術誌Astrophysical Journalで公開されました。(論文はこちら:https://doi.org/10.3847/1538-4357/ae5bad) Journal The Astrophysical Journal Funder Japan Society for the Promotion of Science, Dutch Research Council (NWO), European Commission & University of Groningen CO-FUND Rosalind Franklin Program, National Astronomical Observatory of Japan (NAOJ) ALMA Scientific Research, Science and Technology Facilities Council (STFC) Ernest Rutherford Fellowship, National Aeronautics and Space Administration (NASA) Hubble Fellowship, National Aeronautics and Space Administration, Fondo Nacional de Desarrollo Científico y Tecnológico, Agencia Nacional de Investigación y Desarrollo
9-Jun-2026 沖縄発の記念碑的ご寄付によりOIST初の基金設立へ Okinawa Institute of Science and Technology (OIST) Graduate University Grant and Award Announcement 沖縄科学技術大学院大学(OIST)はこの度、沖縄県内で総合小売業を展開する株式会社サンエーの創業者 折田喜作氏の長女、折田節子氏より、過去最大級となる重要なご寄付を受領しました。
8-Jun-2026 植物に含まれる複雑な天然物の完全化学合成に成功 Chiba University Peer-Reviewed Publication 千葉大学大学院医学薬学府後期3年博士課程の松宮 諭史氏および同大同院薬学研究院の石川 勇人教授らの研究グループは、独自に開発した有機分子触媒反応注1)と、植物内で進行している生合成注2)を模倣した縮合反応を組み合わせることで、キョウチクトウ科植物由来の多量体型インドールアルカロイド注3)であるビスロイコノチンA、ならびにボウシゴニンBについて、世界に先駆けて全合成注4)を達成しました。本成果は、複雑な多量体型インドールアルカロイド類に対する新たな全合成戦略の指針となるだけでなく、それらを活用した創薬研究のさらなる発展につながることが期待されます。 本研究成果は、2026年5月23日に学術誌Angewandte Chemie International Editionオンライン版にて公開されました。(論文はこちら:https://doi.org/10.1002/anie.6698305) Journal Angewandte Chemie International Edition Funder Japan Society for the Promotion of Science, Japan Society for the Promotion of Science, Ministry of Education, Culture, Sports, Science, and Technology, Japan Science and Technology Agency
5-Jun-2026 π共役分子を正方形に組み上げる新手法を開発 National Institutes of Natural Sciences Peer-Reviewed Publication 自然科学研究機構分子科学研究所・総合研究大学院大学の瀬川泰知准教授と張本尚助教の研究グループは、平面状のπ共役分子(1)を直角につなぐことで、4枚のパネルが正方形状に配置された立体的な大環状分子(2)を選択的に合成する新たな手法を開発しました。 本手法は多様なπ共役分子に適用可能で、分子内部の空洞サイズを設計できます。さらに、得られた正方形大環状分子は穏やかな酸の作用で可逆的に色が変わる「酸応答性」を示すとともに、酸を用いた加水分解により出発原料分子を高収率で回収でき、「原料に戻り再生する」持続可能な分子合成を実現しました。1つのイミン結合(3)が「形を作る」「刺激に応答する」「もとに戻る」という3つの役割を担う点に、本研究の独自性があります。本戦略は、正方形に限らず様々な立体構造をもつπ共役分子の精密な合成へと展開できます。 本研究成果は、2026年6月1日(月)付で米国化学会の国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。 Journal Journal of the American Chemical Society Funder JST FOREST Program, JSPS KAKENHI Grant-in-Aid for Scientific Research (B), JSPS KAKENHI Grant-in-Aid for Research Activity Start-up, JSPS KAKENHI Grant-in-Aid for Early-Career Scientists, The Murata Science and Education Foundation, The Iketani Science and Technology Foundation, The Foundation of Public Interest of Tatematsu, The Yazaki Memorial Foundation for Science and Technology, The TOBE MAKI Foundation, Institute for Molecular Science, Research Project, Mass spectrometry was performed using shared equipment at the Equipment Sharing Division, Organization for Co-Creation Research and Social Contributions, Nagoya Institute of Technology., Quantum-chemical calculations were performed using the resources of the Research Center for Computational Science, Okazaki Research Facilities, National Institutes of Natural Sciences