大型犬の方が小型犬より寿命が短い傾向があるのはなぜか。約900頭の犬を対象とした新しい研究によると、その答えは犬のエピゲノムに書き込まれていると考えられる。今回の研究結果から、大型犬やオス犬は、X染色体や転移因子(TE)でDNAメチル化(DNAm)が顕著になり、分子老化が加速していることが明らかになった。老化は普遍的プロセスであるが、その速度と生物学的メカニズムは個体間や種間で大きく異なる。飼い犬は、体の大きさによって寿命が大きく異なるため、老化についての生物学の解明に特に有用なモデルである。例えば、小型犬種は大型犬種より約2倍長く生きることもある。更にペットとなれば、人間と同じ環境で暮らし、市販のフードを食べ、定期的に医療を受けているため、遺伝的背景や環境曝露が老化を進める仕組みの研究にとって適切なトランスレーショナルモデルになる。しかし、体の大きさや生物学的性といった内在性の要因が犬の老化と寿命のばらつきにどう影響するかは依然としてわかっていない。これまでの研究で、DNAmは生物学的老化の有用な指標であること、また、「エピジェネティック時計」は生物学的老化を加速したり減速したりする要因を解明する手段であることが示されている。
Blaise MarinerらはDog Aging Projectの894頭の犬集団から1,640のメチロームを生成し、これらの分子データを詳細な遺伝子及び個体群統計データと組み合わせた。その結果、最も急速な分子老化は生涯の初期に起こっていることを発見した。更に、大型犬とオス犬 - どちらも小型犬とメス犬より短命 - は分子レベルでの老化が早かった。Marinerらは、これらの結果の根底にある様々なエピジェネティックパターンを特定した。その結果によると、性別が関係するメチル化の変化はX染色体上に集中し、一方、体の大きさが関係する変化はゲノムの安定性と遺伝子の調節に影響しうるDNAの領域、つまりTEにおいて特に顕著であったという。