image: 図: 統合アクセシビリティに基づくQOL評価コンセプト view more
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<概要>
豊橋技術科学大学 建築・都市システム学系 都市・交通システム研究室の研究チームは、物理的アクセシビリティ(交通ネットワーク)とデジタルアクセシビリティ(ICTネットワーク)を統合し、将来のスマートシティにおける生活の質(以下:QOL)を定量的に評価する新しい枠組みを開発しました。
本研究では、テレワーク、オンライン学習、EC(電子商取引)などのデジタルサービスが利便性や持続可能性を向上させる一方で、医療や対面コミュニケーションなど、実空間で提供されるサービスや社会的なつながりが引き続き不可欠であることが明らかになりました。研究成果は国際学術誌「Sustainability(MDPI)」に掲載されました。
<詳細>
本研究では,全国の6,210名を対象としたウェブ調査とQOL評価モデルを用いて、本研究はデジタルおよび物理的アクセシビリティが日常生活の活動、持続可能性、そしてQOLにどのように影響するかを示しました。また交通ネットワークによる実空間アクセシビリティとICT環境によるデジタルアクセシビリティを統合し、個人のQOLを評価する統合的評価フレームワークを開発しました。
本研究における主要な知見は以下の通りです。
・買い物、教育、就業、医療、娯楽、観光といった6つの日常サービスにおける代替可能性を検討し、それぞれが実空間アクセシビリティとデジタルアクセシビリティの間でどの程度容易に切り替えられるかの違いを明らかにしました。
・デジタルアクセシビリティの向上は、移動負担を軽減し、時間を節約し、利便性を高めることでQOLを向上させることが示されましたが、同時に、対面での交流や実空間でのサービスが、社会的関係、感情的幸福度、サービス品質を維持するために不可欠であることが示されました。
・デジタルサービスによる代替を持続可能性の成果と関連付け、デジタルサービスの適切な導入が交通需要を削減することで脱炭素化(De-CO₂)に貢献できる一方、デジタルデバイスに不慣れな高齢者などの脆弱なコミュニティを排除しないためには、デジタルファースト戦略が公平な実空間アクセスとのバランスを保つ必要があります。
本研究の共同第一著者である博士後期課程3年のムタハリ・ムスタファさんは「デジタルツールは効率性を高め、環境への影響を軽減することができますが、都市は人間中心であり続けなければなりません。持続可能な都市には、代替ではなく統合という、デジタルの利便性と現実世界のコミュニティ支援の適切な組み合わせが必要です。私たちが導入したQOL評価フレームワークは、さまざまな都市政策を評価する際に、誰も取り残さないというSDGsの主要概念とともに、すべての人の幸福を考慮するのに適していると考えています。」と述べています。
<今後の展望>
今後、本研究チームは、提案したフレームワークを政策意思決定支援ツールへと発展させ、自治体の都市計画担当者や意思決定者が、デジタルと実空間におけるサービスの戦略をシミュレーションし、公平性の観点から人間中心で持続可能なスマートシティを設計できるようにすることを目指します。
<論文情報>
Mutahari,M., Sugiki,N., Suzuki,D., Hayashi,Y.,&Matsuo,K.(2025 A Computational Framework for Evaluating Quality of Life in Sustainable Urban Environments: Integrating Physical and Digital Service Accessibility. Sustainability, 17(21), 9660. 9660; https://doi.org/10.3390/su17219660
Journal
Sustainability
Method of Research
Experimental study
Subject of Research
Not applicable
Article Publication Date
30-Oct-2025