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Updates every hour. Last Updated: 31-Oct-2025 16:11 ET (31-Oct-2025 20:11 GMT/UTC)
9-May-2025
                                  経済学×データサイエンスで「持続可能な生産と消費」の実現を模索する
Kyushu University
                近年、「持続可能な社会」や「SDGs」という言葉をよく耳にします。大気汚染や気候変動、海洋プラスチックといった環境問題を含め様々な課題に直面している現代において、持続可能な社会の実現を目指すためのアプローチにはどのようなものがあるのでしょうか。「持続可能な生産と消費」を目指し、「経済学」と「データサイエンス」の分野を融合した研究を行っている経済学研究院の中石知晃先生に話を伺いました。
            
        8-May-2025
                                                
            ある遺伝子のちょっとした変化が花の腐敗臭の元
American Association for the Advancement of Science (AAAS)Peer-Reviewed Publication
                甘い香りではなく腐ったような悪臭で、花粉媒介者をおびき寄せる植物がある。新しい研究で植物がこれをやってのける仕組みが明らかになった。カンアオイ属の花では、一般的に悪臭のする化合物の解毒に使われる遺伝子が解毒ではなく嫌な臭いを発生するように進化したと、研究者らは報告している。この研究結果は、生態学的優位性のために植物が広く保存された代謝経路をどのように選択するかの解明に役立つ。悪臭を放つ花の大きな特徴は、嫌な臭いのする揮発性化合物、特にジメチルジスルフィド(DMDS)やジメチルトリスルフィド(DMTS)のようなオリゴスルフィドを放出することである。こういった化合物は、物質を腐敗させることで発せられる化学シグナルを模倣している。これらの化合物が含硫アミノ酸の細菌分解に由来することは知られているが、花がこれらを作り出せる生物学的メカニズムはほぼわかっていない。これを探究するために、奥山雄大はカンアオイ属の花について研究を行った。この属の花は形態も香りも非常に多様で、こういった特徴は様々な昆虫花粉媒介者をおびき寄せるために進化したと考えられている。
奥山らは、比較ゲノミクスと機能アッセイを通して、花からのDMDS放出はセレン結合タンパク質ファミリーの遺伝子の発現と関係があることを発見した。ヒトにおいては、関連タンパク質であるSELENBP1が通常メタンチオール ―― 病的口臭の原因である強い悪臭を持つ化合物 ―― を解毒する。SELENBP1がメタンチオールをより害の少ない物質に変えて解毒するのである。奥山らは、カンアオイ属で型の異なる3つのメタンチオールオキシターゼ遺伝子、SBP1、SBP2、 SBP3を発見した。彼らは、これらの遺伝子を細菌内で発現させ、その酵素機能を検査することで、SBP1が独自の反応を示すことを発見した。メタンチオールを解毒するのではなく、DMDSに変えるのである。この能力はSBP1の少数のアミノ酸変化によって生じたもので、それによりSBP1の酵素機能がメタンチオールオキシターゼ(MTOX)からジスルフィドシンターゼ(DSS)に変わった。これは少なくとも3つの無関係な植物系統で別々に進化したと考えられ、類似する生態学的圧力によって引き起こされた収束進化を指している。関係するPerspectiveではLorenzo CaputiとSarah O’Connerが次のように書いている。「特筆すべきは、祖先からの酵素活性であるメタンチオール酸化はヒトでも観察されているが、酵素によるオリゴスルフィドシンターゼ活性は植物でしか進化しなかったことである。これは、植物が絶え間ない進化的圧力を受け、コミュニケーションと防御のための複雑な化学的性質を生み出しているためと考えられる。」
            
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8-May-2025
                                                
            柔軟なチューブと空気から成る柔らかい肢により、動的・自律的な移動が可能なロボット
American Association for the Advancement of Science (AAAS)Peer-Reviewed Publication
                空気の流れと単純な物理的設計 ――― 道路脇で見かける「空気で膨んで踊るエアダンサー」のような構造 ――― のみを用いて、複雑な電子制御装置に頼らず協調的で自律的な動作を成し遂げるソフトロボットを研究者らが開発した。自然界において、動物は多くの場合驚くほど効率的に動く。動物はこれを、神経系と身体機構、環境相互作用をシームレスに統合することで行っている。このような分散協調により、動物は脳からの絶え間ない指示に頼らなくても効率的に動くことができるのだ。それに対して、ほとんどのロボットは自身の動きの調整を中央集中的な処理装置に大きく依存している。剛体ロボットやソフトロボットは、ボディダイナミクスや形態変化を利用して動いたり障害物を避けたりすることができるが、多くは四肢の欠如や時間がかかる逐次的な制御機構への依存のために、適応性が制限されたままだ。さらに、大きくて扱いにくいアナログ的設計によりエネルギー効率は悪く応答時間は遅くなるため、複雑な環境での実用性や自律的能力に限界がある。中央処理装置に依存しないすばやい動作を達成するために、Alberto Comorettoらは、空気の連続流のみを動力として自ら周期的に振動するロボット肢を開発した。この肢は湾曲したシリコンチューブから成り、空気の流れがない状態では、ねじれた形で安定を保つ。ところが一定の空気流を適用すると、自発的にねじれ状態と別のねじれ状態の間で振動し、300ヘルツに達する周波数ですばやい足踏み運動を行う。この運動は、圧力、ねじれ形成、チューブ抵抗のフィードバックループから生じており、機械的な「心拍」のようなものだ。Comorettoらは複数の肢を物理的につなげ、環境フィードバックを利用することで、電子制御なしでの同期歩行を実現させ、同等のソフトロボットを上回る速度でロボットを移動させることに成功した。また、これらのロボットは水陸両用でもあり、自動で歩行を変化させて入水と水中移動も行うことができた。この論文にご興味のある記者の方へ:このロボット工学プラットフォームの能力を説明する多数の動画を、著者らは提供しています。
            
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7-May-2025
                                  ATSでお会いしましょう | インシリコ・メディシン、2025年米国胸部疾患学会国際会議での発表を予告
InSilico MedicineMeeting Announcement
                インシリコ・メディシンの創業者兼共同CEOのアレックス・ザボロンコフ博士、最高医学責任者のスジャータ・ラオ医学博士、最高ビジネス責任者のミシェル・チェン博士、臨床開発上級副社長のキャロル・サトラー医学博士・Ph.Dが率いる経験豊富なインシリコチームは、ブース#1464、モスコーンセンターABCホールにて、共同研究および臨床的な知見についての対話をお待ちしております。
            
        2-May-2025
                                  心と身体の制御に関わる「脳幹の孤束核」を読み解く
National Institutes of Natural SciencesPeer-Reviewed Publication
                近年、脳と臓器とのつながりによる「こころの制御」の仕組みが着目され、両者を中継する「脳幹の孤束核」の機能が関心を集めています。しかし「孤束核」は、脳の深部にあるため、生きた状態の動物における観察が難しく、未だ多くの機能が不明です。そこで今回、生理学研究所の揚妻正和准教授らは、革新的な脳深部イメージング法を開発し、生体マウスにおいて、孤束核を行き交う情報の、高解像度な観察に成功しました。本研究はCell Reports Methods誌に掲載されました。
            
        - Journal
- Cell Reports Methods
- Funder
- JSPS KAKENHI, Takeda Science Foundation, Research Foundation for Opto-Science and Technology, Japan Agency for Medical Research and Development, National Institute for Physiological Sciences : Cooperative Study Program, National Center of Neurology and Psychiatry : Research Grant for Neurological and Psychiatric Disorders
1-May-2025
                                                
            北米の鳥類は最も個体数の多い場所で最も急速に姿を消している
American Association for the Advancement of Science (AAAS)Peer-Reviewed Publication
                約500種の鳥類についての市民科学データを活用した新しい研究によると、北米の鳥の個体数はまさに、鳥がまだ最も多く存在する場所で最も急速に減少しているという。この研究結果で、脅威が差し迫っていること、的を絞った保全と回復に向けた潜在的チャンスがあることの両方が明らかになった。鳥の個体数は世界的に急速に減少しており、北米では1970年以降、全ての繁殖鳥の25%以上が消えた。長期モニタリングによって懸念されるこれらの傾向は判明したが、効果的な保全に必要なのは個体数が最も減少している場所の把握である。しかし、鳥の個体数の傾向についての空間的に広範で詳細なデータがないため、この目標達成には限界があり、それゆえ、個体数回復の取り組みに優先順位をつける、若しくは、地域ごとの減少および回復パターンを解明するといったことは難しい。この必要性に対処しようと、Alison Johnstonらは2007年から2021年の3,600万を超えるeBirdチェックリストから市民科学データを集め、北米、中米、カリブ海地域の鳥類495種について詳細な個体数の傾向を調べ出した。高い空間分解能で鳥の目撃情報の変化を分析することで、彼らは観察者の行動の違いと鳥の個体数の実際の変化を切り離せた。彼らが採用した方法は、微妙な個体数の変化を高い統計的信頼性で検出できる特殊な機械学習モデルを使うものであった。
今回の分析で判明したのは、複雑なパッチワークのような地域的個体数動態である。全体的な傾向としては鳥類の75%がそれぞれの分布域全体で減少 ―― 65%は激減 ―― しているとされているが、ほぼ全ての種(97%)が分布域内の生息場所によって増加したり、減少したりしている。とりわけ、鳥の個体数が最も急速に減少しているのはまさに、個体数が依然として最も多い場所であることをJohnstonらは発見した。このパターン ―― 83%の種で見られた ―― が示しているのは、個体群のベースとなる場所でさえ、もはや安全ではないことである。この減少は、草原や乾燥地で繁殖する鳥類において特に深刻で、また、種の分布域内の地理的位置よりその場所の個体数の豊富さと密接に関連していると、今回の研究結果は示している。このことが指摘するのは、生態学的ストレス ―― 気候変動と生息地喪失 ―― が個体数を減少させる主な要因だということである。豊富な個体数を支える生息場所はこれらのストレスに対して脆弱で、一方、分布辺縁域の種ほど回復力が大きいと考えられる。今回の研究では、広範囲で個体数が減少しているにもかかわらず、アパラチア山脈と西部山岳地帯といった安定した地域があることも明らかになり、こういった地域は避難場所になったり、回復を促進できる条件を提示したりすると考えられる。
こういった傾向に関心のある記者の皆様へ。2019年のScienceのResearch Articleで、北米では1970年以降に約30億の鳥が消えてしまったことが報告されています。
            
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1-May-2025
                                                
            解明:バラの花びらの成長を形作る幾何学的「フラストレーション」
American Association for the Advancement of Science (AAAS)Peer-Reviewed Publication
                バラはその美しさと象徴的な豪華さで長い間賞賛されてきたが、バラの象徴である花びらの形を作っている力学的なプロセスは、これまで大部分が謎のままであった。新たな研究によると、バラの花びらの縁(ふち)に成長と共に次第に形成される鋭い尖は、波状の葉の背後にあるよく知られた力学によってではなく、それとは異なるMainardi-Codazzi-Peterson(MCP)incompatibilityという幾何学的フラストレーションによって形作られる。研究結果によると、この応力集中現象はバラの形を造形するだけでなく、フィードバックを返して花びらの成長の仕方にも影響を与えている。これは自然の力学に対する新たな洞察を与えるものであり、バイオインスパイアード材料の設計に着想をもたらす可能性がある。葉や花びらに見られる複雑な曲線やカールは多くの場合、自然の成長と幾何学との相互作用によって生じる。植物組織のような弾性の物質では、成長に伴い、物質の自然な幾何学的選好と物理的に可能なこととの間にミスマッチが起こり、幾何学的不適合として知られる固有応力が生じうる。これらの応力が蓄積するにつれて形状変化が起こる場合があり、このような作用はGauss incompatibilityとして知られている。これは葉や花びらの波打った縁などの特徴を説明するものである。しかし、バラの花びらの縁に沿って現れる独特の鋭くとがった尖は、他の多くの花で見られる柔らかな波状のパターンとは異なっており、従来のGauss incompatibilityでは説明できない特徴だ。
今回、Yafei Zhangらは、理論的解析と計算モデリング、人工ディスク花弁の実験的作製を組み合わせ、バラの花びらにおいて成長が誘導する力学的不安定性について研究した。その結果Zhangらは、バラの花びらの独特な形状はGauss incompatibilityに支配されているのではなく、Mainardi-Codazzi-Peterson(MCP)incompatibilityとして知られる独特な種類の幾何学的フラストレーションにより支配されていることを発見した。Gauss型ミスマッチから引き起こされる従来の形状変化とは異なり、このメカニズムでは非常に限局的な領域に応力が集中し、バラに見られるような鋭くはっきりした尖が現れる。さらに著者らは、花びらの尖における応力の極度な集中が周囲の組織の成長や形成の仕方に影響を与えていることを示し、生物学的成長と幾何学的制約そして機械的な力の間における強力なフィードバックループを明らかにした。「形成のメカニズムとしてMainardi-Codazzi-Peterson incompatibilityを特定することは、形態形成研究における重要なマイルストーンであるだけでなく、形状変化材料や形状変化構造の新たな設計に着想を与えるものでもある」と、関連するPerspectiveでQinghao CuiとLishuai Jinは述べている。「Gauss incompatibilityとMinardi-Codazzi-Peterson incompatibilityを組み合わせることで、これまでに見たこともない変形挙動が生じる可能性がある。」
            
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1-May-2025
                                  がん細胞由来細胞外小胞の標的細胞表面への結合機構を分子レベルで解明
Institute for Glyco-core Research (iGCORE), Tokai National Higher Education and Research SystemPeer-Reviewed Publication
                岐阜大学糖鎖生命コア研究所教授鈴木健一(国立がん研究センター研究所先端バイオイメージング研究分野分野長併任)、岐阜大学連合農学研究科博士課程大学院生磯貝樹らの研究グループは、岐阜大学糖鎖生命コア研究所教授安藤弘宗、同助教河村奈緒子、中部大学生命健康科学部教授古川鋼一との共同研究で、がん細胞が分泌した細胞外小胞が正常な細胞と結合する分子機構を明らかにしました。近年、細胞間の情報伝達の担い手として、細胞外小胞が注目されています。特に、がん細胞が分泌した細胞外小胞が、がん化していない他臓器の細胞に取り込まれると、その近傍にがん細胞が転移しやすい環境が形成されると言われていて大変ホットな研究対象となっています。しかし、この細胞外小胞が標的細胞に取り込まれる前に、どのように選択的に結合するのか、その機構が明らかではありませんでした。そこで、本研究では、細胞外小胞を1粒子ずつ観察しつつ、標的細胞上の細胞外マトリックスを空間精度21nmで、疑似リアルタイムに超解像動画観察する手法を開発しました。これらの方法により、ラミニンとインテグリンα6β1またはα6β4の結合を介して細胞外小胞が細胞に結合することを明らかにしました。そして、細胞形質膜とは違い細胞外小胞膜内層では、主要なインテグリン活性化分子であるタリン1やキンドリン2が機能せず、膜上のテトラスパニンCD151によりインテグリンが活性化されていることを明らかにしました。また、インテグリンとは別に細胞外小胞中の糖脂質ガングリオシドのGM1がラミニンに結合することを見出しました。また、細胞外小胞とラミニンの結合が、血管内皮細胞の血管新生様の形態変化の誘導に必須であることを明らかにしました。
            
        - Journal
- Journal of Cell Biology
