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科学系ニュース配信サービス「EurekAlert!」、学術論文の報道機会を4倍に拡大

米国のメディアによる考古学研究の報道を分析した研究(Science Advances誌掲載)によると、ニュースリリース配信サービス「EurekAlert!」に掲載されたプレスリリースが、米国内のメディアで取

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

EurekAlert!、学術論文の報道機会を4倍に拡大

image: 米国のメディアによる考古学研究の報道を分析した研究(Science Advances誌掲載)によると、ニュースリリース配信サービス「EurekAlert!」に掲載されたプレスリリースが、米国内のメディアで取り上げられる可能性を約4倍高めることが分かりました。 view more 

Credit: EurekAlert!

ハーバード大学の研究チームが米国における考古学研究の報道状況を分析した結果、ニュースリリース配信サービス「EurekAlert!」に掲載されたプレスリリースを伴う論文は、そうでない論文と比べて米国メディアに取り上げられる可能性が約4倍高いことが明らかになった。この研究結果は米国科学振興協会(AAAS)が発行する学術誌 Science Advances に7月2日号に掲載されている。

メディア報道と科学コミュニケーションの関係 

科学的発見に関する一般市民の理解は、これまで主に大手メディアによる報道を通じて形成されてきた。学術論文がどのようにして大衆メディアに伝わるのかを明らかにするため、研究チームは6年間にわたり、専門誌1誌と総合科学誌6誌に掲載された1155本の考古学論文と、それに対する報道を分析した。 

その結果、EurekAlert! にニュースリリースが掲載された論文は、米国主要15メディアで取り上げられる可能性が約4倍高いことが判明。調査対象のうち224本の論文がEurekAlert!にニュースリリースを掲載し、その70%(158本)が報道されたのに対し、ニュースリリースのなかった931本の論文では22%(209本)にとどまった。 

研究者・関係者の見解 

共同責任著者であるハーバード大学のブリジット・アレックス氏(人類進化生物学講師)は、「EurekAlert! にプレスリリースが掲載された論文は、少なくとも1つの米国ニュース媒体で報道される確率が約4倍高かった」とコメント。その要因の一つとして、ジャーナリストが科学論文発表前にリリースへアクセスできる「エンバーゴ機能」を挙げた。 

また、EurekAlert! ディレクターであるブライアン・リン氏は、「EurekAlert! が報道獲得に役立つことは以前から知られていたが、今回の研究でその効果が独立した形で検証されたことは大変喜ばしい」と語った。 

学術誌の影響と地域的な偏り 

分析では、Nature や Science などトップジャーナルに掲載された論文の90%以上が米国主要メディアで報道されており、掲載誌の知名度が報道確率に影響することも判明した。 

さらに、米国、英国、イスラエル、パレスチナ、オーストラリアで行われた研究は、中国や台湾に比べて約3倍報道されやすいという地域的偏りも確認された。米国の報道機関は地理的・文化的な近接性を重視する傾向があり、北米で実施された研究の約44%は米国の報道で取り上げられていた。

一方、中国や台湾に関する研究は発表数が多いにもかかわらず報道割合は低く、報道された場合でも「人類の祖先」「大麻の起源」「5000年前のビール醸造法」など、一般的関心の高いテーマに限られていた。

研究の示唆と課題 

アレックス氏は「学術的価値と報道価値は必ずしも一致しない」と述べ、報道の偏りがうかがえる現状を懸念した上で、「メディア露出を望む研究者は、所属機関や学術誌の広報部と連携し、EurekAlert! を通じてプレスリリースを発信することを検討すべきだ」と推奨した。 

ただし、すべての研究者に十分な広報リソースがあるわけではなく、そのことが研究者の可視性や生産性の評価の不平等につながる可能性があることも指摘されている。 

研究の背景 

本研究には、ハーバード大学のローワン・フラッド教授(考古学)、当時カリフォルニア工科大学学部生で現在スタンフォード大学博士課程所属のジェニー・ジー氏が共同執筆者として参加。研究の予備成果は2022年の米国考古学協会年次大会で発表された。 

EurekAlert! について 

EurekAlert! はAAAS(米国科学振興協会)が運営する非営利のニュースリリース配信サービスであり、ジャーナリストは無料でエンバーゴ中および公開済みのニュースリリースやプレス資料にアクセスできる。掲載料は出版社、大学、研究資金提供機関などの組織により支えられている。現在は約1万4000人のジャーナリスト会員と1600の提供組織を有し、エンバーゴ解除後はすべてのニュースリリースが一般公開される。 


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