image: Our study progresses from the rational design of polyplex micelles to the mechanistic elucidation of mRNA degradation, revealing RNase infiltration—rather than carrier dissociation—as the principal cause of mRNA fragmentation. In vivo FRET imaging confirms the structural robustness of polyplex micelles during blood circulation. However, qPCR-based analysis of mRNA integrity under identical conditions reveals degradation of the encapsulated mRNA. These findings suggest that future polyplex designs must incorporate protective features that block RNase access to the mRNA-containing core.
Credit: Reproduced from J. Control. Release 384, 113935 (2025) under a Creative Commons Attribution License 4.0 (CC BY).
ナノ医療イノベーションセンター(センター長:片岡一則、所在地:川崎市、略称:iCONM)は、2025年6月5日、国際的な学術誌 “Journal of Controlled Release” のウェブサイトで以下の研究成果を公開しました。論文のタイトルは「全身投与におけるmRNAポリプレックスミセルの構造的安定性とRNase耐性」というもので、ミセル内にあっても分解酵素によって活性を失いやすいmRNA薬をより安定な状態で標的組織に送達する手法について記しています。
ポリカチオンベースのmRNA送達系は、mRNA薬としての大きな可能性があるにもかかわらず、生理的環境、特に血液中でのmRNAの安定性に問題を抱えています。包括的なメカニズム解析なしでは、in vivoで安定なポリプレックスミセルをどう設計したら良いかが定かでありません。本研究では、ポリプレックスの安定化に関するいくつかの潜在的パラメータを体系的に評価し、ポリプレックスに搭載されたmRNAの分解プロセスに関するメカニズムの洞察を行いました。特に、ポリプレックス内含のmRNAの安定性喪失の主な原因と考えられているRNaseによる攻撃に焦点を当てました。この目的のために、mRNAとポリ(エチレングリコール)(PEG)-ポリカチオンブロックコポリマーからなるポリプレックスミセル(PM)がin vivo応用に適した基本形して使用されました。
PEGの長さを12-kDaから42-kDaに延ばすとPM表面のPEG層の厚さが増加すると考えたものの、RNaseに対する安定性は改善されませんでした。一方で、ポリカチオンセグメントの延長と、ポリカチオン構造の側鎖の微妙で重要な調整、すなわちポリ(l-リシン)からポリ(l-オルニチン)への変更が、搭載するmRNAのRNase攻撃に対する耐性を大幅に改善することがわかりました。それにもかかわらず、最適なPM製剤でも、50%の血清中で30分間のインキュベーション後にほぼ50%のmRNAが分解されました。mRNA分解の可能性のあるメカニズムには、(i) 血清中の陰イオンバイオ分子とのポリイオン交換反応によるPM構造の解離によってmRNAが放出され、その後RNase攻撃を受けること、(ii) PM内部へのRNaseの浸透によってPMが解離せずに内含するmRNAを直接攻撃することが含まれます。一連のメカニズム実験は、mRNAが50%の血清処理によって完全性を失った後でもPM内に残っていることを示しており、後者が内含するmRNAの分解の主な理由であることを示しています。
さらに、循環血液中のPM構造と搭載mRNAの安定性をマウスで別々に評価しました。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いたmRNA複合体の状態の in vivo顕微鏡観察は、血液循環下でもPM構造内で延びたmRNAの保持を示しています。対照的に、mRNA安定性の定量的PCR評価では、同じ条件下での迅速なmRNA分解の発生を明らかにしました。この研究は、PM構造が血液循環下での解離に対して十分に堅牢であることを強調しています。しかし、全身投与のためのPMベースのmRNA送達系を最適化するための残された課題は、搭載mRNAを収納するポリプレックスコアへのRNase侵入を防ぐ機能を構築することとなります。
研究の新規性:
- ポリプレックスミセルへの RNase の浸透が、ポリプレックスから解離しなくても、mRNA を分解する経路として浮かび上がっています。この発見は、キャリアの構造的安定性にもかかわらず、搭載物保護に関しての重大な脆弱性を明示し、ポリマーを基盤としたデリバリーシステムにおける mRNA の分解に関する理解を深める上でパラダイムシフトをもたらします(図)。
- PEG の長さを 12-kDa から 42-kDa に延ばしても、ポリプレックスミセス上の PEG 層による表面シールドの増加が推定されるにもかかわらず、RNase 耐性は向上しませんでした。
- ポリカチオンセグメントの長さを 40回繰り返し構造から 70 回繰り返し構造に延ばすことで、内包された mRNA の RNase による分解に対する耐性が顕著に向上しました。
- ポリカチオンの側鎖における軽微ながらも重要な修正、具体的にはポリ(L-リジン)をポリ(L-オルニチン)に置き換えることで、mRNA の RNase 分解に対する耐性が大幅に向上し、ポリプレックスの安定化について新たな構造-機能の洞察を提供します。
社会への今後の貢献:
- 本研究は、次世代のポリマーを基盤とした mRNA デリバリーシステムの合理的設計を行う上でメカニズムについての基盤を提供します。RNase の浸透を防ぎ、mRNA の安定性を保持するためには、コアの周密化や酵素シールドなどの抗 RNase 戦略を組み込むことが不可欠です。これらの進展は、生物学的に脆弱な核酸治療法を強固なポリプレックスミセスに変換し、mRNA ベースのワクチン、遺伝子治療、および癌免疫療法の臨床転送を加速し、グローバルヘルスに広範な影響を与えるために重要です。
- 常温でのポリプレックスミセスの保存安定性は、実用的な適用性を向上させ、現実世界での臨床展開の有望な候補として位置づけます。
Journal
Journal of Controlled Release
Method of Research
Experimental study
Subject of Research
Animals
Article Title
Structural stability and RNase resistance of mRNA Polyplex micelles for systemic delivery
Article Publication Date
5-Jun-2025
COI Statement
The authors declare that they have no known competing financial interests or personal relationships that could have appeared to influence the work reported in this paper.