image: Immobilized microorganisms are collected on a membrane filter and rinsed with pure water. The hydrated specimen is frozen by gently contacting it with a copper block pre-cooled to -80°C, then mounted on a pre-cooled steel support stage, and transferred to a freeze-dryer. Ice is then removed by sublimation. The workflow can be carried out with either a standard laboratory freeze-dryer or a dedicated freeze-drying apparatus.
Credit: Shujitsu University
走査型電子顕微鏡(SEM)は、細菌をはじめとする微生物の表面にある微細な構造を観察するために広く用いられています。しかし、生物試料には水分が含まれているため、真空環境で観察するSEMに導入する前に、試料を乾燥させる必要があります。一般的な試料作製では、化学固定後に濃度を段階的に高めたエタノールで脱水し、臨界点乾燥を行うか、t-ブチルアルコールなどの有機溶媒へ置換した後に凍結乾燥を行います。これらの操作では、脂質や水溶性成分が失われるほか、収縮、亀裂、構造の崩壊が生じることがあり、観察された形態が細菌本来の構造なのか、試料作製による人工的な変化なのかを区別することが難しい場合があります。
就実大学の山田 陽一、小川 和加野、神戸大学の洲崎 敏伸、自然科学研究機構 生理学研究所の村田 和義、島根大学の石田 秀樹、ウクライナ国立科学アカデミー進化生態学研究所のLiudmyla Gaponova、ウクライナ国立科学アカデミー物理学研究所のAndrii Kolosiuk、韓国・釜山大学のChihong Songらの研究グループは、「水凍結乾燥法(Water Freeze-Drying; WFD)」を細菌試料へ適用しました。本研究成果は、学術誌Frontiers in Microbiologyへ掲載されます。
WFD法では(図1)、固定した微生物をメンブレンフィルター上に回収し、超純水で洗浄します。次に、マイナス80℃に冷却した銅ブロックを試料へ穏やかに接触させて凍結させます。凍結状態を保ったまま試料を凍結乾燥機へ移し、氷を昇華によって直接除去します。エタノール脱水や有機溶媒への置換を行わないため、試料作製時に生じる物理的・化学的な負担を軽減できます。
研究チームは、従来のt-ブチルアルコール凍結乾燥法とWFD法で作製した大腸菌試料をSEMを用いて観察することで比較しました。従来法の試料では、試料中の細菌の分布に明瞭な亀裂と大規模な収縮が認められました。一方、WFD法では、試料中の細菌がほぼ連続した状態で保たれていました。さらに高倍率で観察すると、従来法では大部分の細胞端が丸いドーム状に見えたのに対し、WFD法では丸い細胞端に加えて、鋭く切断されたような平坦な極を持つ細胞も認められ、細胞端の形態が均一ではないことが明らかになりました(図2)。
この結果は、従来の脱水操作によって細胞端が一様に丸く見えるようになり、一時的あるいは生理学的に意味のある構造状態が見えにくくなっていた可能性を示しています。ただし、平坦な細胞端が持つ生物学的な意味については、今後さらに検討する必要があります。また、WFD法に特有の人工的変化を完全には否定できないため、異なる観察手法との比較も重要です。
さらに、WFD法の大きな利点の一つは、利用しやすさです。研究チームは、SEM試料作製用の専用凍結乾燥装置だけでなく、一般的な実験室用凍結乾燥機でもWFD法を実施できることを確認しました。そのため、高い形態保存性を目指したSEM試料作製に必要な技術的・経済的なハードルを下げられます。今後、微生物の細胞構造、抗菌薬などによる細胞表面損傷、バイオフィルムの三次元構造など、幅広い研究への応用が期待されます。
Journal
Frontiers in Microbiology
Method of Research
Experimental study
Subject of Research
Cells
Article Title
Water Freeze-Drying for High-Resolution SEM: An Accessible Strategy for Capturing Native Microorganism Morphology Without Dedicated Rapid-Freezing Systems
Article Publication Date
18-Aug-2026