中国の県級行政区2,300ヵ所以上を対象とした研究の報告によると、太陽エネルギーを世界的に推進すれば、生物多様性に見えない負荷がかかるおそれがあるという。その研究結果によれば、太陽光発電開発を促進する政策の強化に伴って、鳥類の多様性が減少していた。これは主に、生態学的に多様な農地や草地が開発用地に転換されたためである。再生可能エネルギーの拡大は気候変動への対策には役立つが、大規模な太陽光発電開発は、生息地を転換または分断し、生物多様性の損失を引き起こすことによって、環境面での新たな代償を生む可能性がある。鳥類は、広範囲で比較的よく追跡調査されているうえに、植生、繁殖地、入手可能性な食物などの変化に敏感に反応するため、鳥類の多様性の変化から、従来の指標では見落とされがちな生態学的影響を明らかにできる可能性がある。中国では、急速に拡大する太陽光発電が主要なエネルギー源になると予想され、太陽光発電設備は既に数千平方キロメートルの面積を占めており、鳥類の個体数や生息地にますます大きな影響を与えるおそれがある。さらに、中国の太陽光発電インフラは、政府の政策から強い影響を受けており、その立地や規模は政策によって大きく左右されてきた。
今回、Huiming Zhangらは、太陽光発電の拡大がもたらす生態学的影響を調べた。Zhangらは、2014~2023年に中国の県級行政区2,344ヵ所を対象として、大規模なデータセットを構築した。そのデータセットは、鳥類の観察記録、太陽エネルギー政策、環境条件、および社会経済的情報を統合したものであった。これにより著者らは、太陽光発電促進政策と地域の鳥類多様性との関連性を評価することが可能になった。また、土地利用、植生、農業生産性の変化が及ぼす影響についても調べた。その結果、太陽光発電の拡大を促進する政策が強化されると、鳥類の多様性が大幅に低下することが明らかになった。政策強度が1標準偏差増加すると、鳥類の生物多様性指数は2.10%低下した。こうした影響は、より裕福な地域と砂漠以外の地域で最も顕著であり、地理的に広く分布する種ほど大きな影響を受けた。その主な理由は、急速な土地転換、とくに農地や草地が開発用地に転換されたことによって、植生の多様性が減少したことである。Zhangらはまた、「劣悪な緑化」という逆説的なパターンも確認した。これは、葉面積指数が高くて緑豊かな景観に見えても、全体としては生態学的に貧弱になるというパターンである。関連するPerspectiveではYuanning Liangが、「次の段階は、鳥類の多様性における変化を生態系サービスや保全価値と関連付けることによって、生物多様性の測定から評価へと移行することである」と述べている。「こうした評価を行わなければ、政策分析では保全の重要性が十分に考慮されず、費用便益分析では開発に伴う社会的コストが過小評価される可能性がある。気候政策において、炭素の社会的コストを算出する際に気候変動被害の信頼できる推定値が必要とされるのと同様に、持続可能な開発に向けた政策によって生態系が変化する場合には、生物多様性の価値に関する信頼できる推定値が必要となる」
研究公正の問題にご興味のある記者の方へ:本研究の共著者であるKai Wuは次のように述べています。「私たちの研究分野において、科学研究上の公正性は、透明性のあるデータ運用、再現可能な分析の枠組み、学際的な手法を責任をもって統合することに、ますます依存しています。気候変動の緩和と適応、現代のエネルギーシステム、および生態学的プロセスと、社会経済システムとを結びつける研究が増えるなか、科学的証拠が世界の持続可能性政策に確実に活用されるためには、データの妥当性検証やモデルの透明性について共通基準を策定することが不可欠になります」
Journal
Science
Article Title
China’s solar expansion policy reduces bird diversity
Article Publication Date
20-Aug-2026