News Release

デジタルサービス利用が暮らしと都市構造を変える

年齢・車の保有・オンライン活動が都市の持続可能性に影響

Peer-Reviewed Publication

Toyohashi University of Technology (TUT)

図1:デジタルサービスによる代替・ソーシャルネットワーク・都市構造の相互関係

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<概要>

豊橋技術科学大学 建築・都市システム学系 都市・交通システム研究室の研究チームは、デジタルサービスの代替利用による、都市における公平性と持続可能性への影響に関する研究を行いました。本研究では、オンラインショッピングやリモートワークなどのデジタルサービスの利用が、ソーシャルネットワークや人口属性と相互に作用し、住居選択や都市構造にどのように影響を与えているのかを明らかにしています。この研究成果は、国際学術誌「Sustainability」に掲載されました。

<詳細>

全国6,210名を対象とした大規模なアンケート調査を通じて、人々のデジタルサービス利用やオンライン上での社会的交流が居住地選択に与える影響を把握し、都市構造に及ぼす影響を分析しました。

本研究における主要な知見は以下の通りです。

・年齢の影響:高齢者はデジタルサービスの利用が少なく、年齢が1歳上がるごとに都市部での転居可能性は約4.4%低下します。

・デジタルサービス利用と住居地選択:テレワークやオンラインショッピングなどのデジタルサービスを多く利用する人ほど、転居の意思が強く、都市構造や公的サービス需要にも変化をもたらす可能性があります。

・自動車保有とデジタルサービス利用:車を所有する人は、所有していない人に比べて9%高い確率でオンラインショッピングを利用しています。デジタルサービスは移動を減らすという一般的なイメージとは異なり、我々の調査では、車を持つ人ほどオンラインで買い物をしていることが分かりました。これは、車で移動して店舗にて商品を事前に確認し、その後オンラインで安価に購入するという柔軟性が関係している可能性があります。

・オンライン上のソーシャルネットワーク:デジタルサービスを多く利用する人は、対面での人間関係よりも、SNSなどのオンライン上での関係性を重視する傾向にあり、社会的結束力や災害対応、地域の安全システムにも影響を与える可能性があります。こうした行動の変化は、単なる利便性の問題ではなく、都市インフラや社会関係、そして都市の長期的な持続可能性そのものを変えつつあります。

・デジタル格差の拡大:高齢者や地方居住者においてはデジタルサービスへの関与が顕著に低く、オンラインサービスが拡大する中で、これらの層が社会から孤立する恐れがあります。

本研究の共同第一著者である博士後期課程3年のムタハリ・ムスタファさんは「都市開発はスマートであると同時に包摂的でなければなりません。デジタルでつながる未来を持続可能なものにするためには、すべての人が公平に参加できることが不可欠です。私たちの研究は、SDGs No.11(住み続けられるまちづくりを)とSDGs No.10(人や国の不平等をなくそう)にも深く関係しています。政策立案者は、デジタルサービスと移動を伴う実空間の店舗等でのサービス提供のバランスを取る必要があります。どちらか一方への依存は、持続可能な都市づくりにとってリスクとなります。今後は『置き換え』ではなく『統合』がカギであり、それがウェルビーイング、包摂性、都市のレジリエンスを実現する道です。」と述べています。

<今後の展望>

今後、デジタルと実空間でのサービスの利用バランスを最適化するための「定量的トレードオフモデル」の開発を予定しています。このモデルは、デジタルサービスの代替が都市構造、社会環境、そして居住者の生活の質に与える影響を定量的に評価し、持続可能かつ包摂的な都市戦略の立案に貢献することを目指します。

論文情報

Mutahari, M., Suzuki, D., Sugiki, N., & Matsuo, K. (2025). Digital Service Substitution and Social Networks: Implications for Sustainable Urban Development. Sustainability, 17(11), 5185. https://doi.org/10.3390/su17115185


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