News Release

固体表面上の氷の形成を操る“水”の構造の秘密を解明――氷の形成は基板表面付近の水の秩序構造で決まる――

Peer-Reviewed Publication

Institute of Industrial Science, The University of Tokyo

固体表面上の氷の形成を操る“水”の構造の秘密を解明――氷の形成は基板表面付近の水の秩序構造で決まる――

image: 固体結晶基板上での不均一氷核生成の様子。色分け:六方晶氷(緑)、0型氷(赤)、立方晶氷(黄)、クラスレート(橙)。 view more 

Credit: 東京大学 生産技術研究所

東京大学 生産技術研究所 着霜制御サイエンス社会連携研究部門(研究当時)/同大学 先端科学技術研究センター 極小デバイス理工学分野 田中肇シニアプログラムアドバイザー(特任研究員)兼同大学名誉教授と同大学 生産技術研究所 着霜制御サイエンス社会連携研究部門 サン ガン特任研究員(研究当時)の研究グループは、氷がどのようにして固体表面上で形成されるかという長年の謎に対して、新たな理解をもたらす研究成果を発表しました。これまで氷の固体表面上での不均一核形成(表面に誘起されて氷の「芽」ができる現象)は、主に表面の「親水性(濡れやすさ)」や「氷と基板の結晶格子の相性の良さ」などに依存していると考えられてきましたが、本研究はこれに対し、氷の形成は実は表面そのものよりも、表面に接する液体水の秩序化の程度に大きく依存していることを、分子レベルで明らかにしました。

具体的には、高精度の分子動力学シミュレーションを通じて、液体水が表面付近でどのような構造をとるかを詳しく調べたところ、氷の核は、まず表面直近の「2層からなる接触層」で秩序ある六員環構造が現れ、それが2次元六方晶氷の形成を促し、それがさらに3次元的な氷の形成につながるという階層的な構造化を経て形成されることがわかりました。特に驚くべきは、最も氷の形成が促進されたのが、親水性が“中程度”の表面であった点であり、これは従来の「親水性が高いほど良い」という常識に反する結果です。

この研究成果は、氷に限らず、シリコンやシリカといった四面体液体の表面結晶化にも共通する普遍的な機構である可能性が高く、気候モデルにおける氷粒子形成の理解、低温保存や凍結制御技術、さらにはナノマテリアルの設計指針にまで幅広く応用が期待されます。

本成果は2025年6月4日(水) 18時(日本時間)に「Journal of Colloid and Interface Science」のオンライン速報版で公開されます。


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