バラはその美しさと象徴的な豪華さで長い間賞賛されてきたが、バラの象徴である花びらの形を作っている力学的なプロセスは、これまで大部分が謎のままであった。新たな研究によると、バラの花びらの縁(ふち)に成長と共に次第に形成される鋭い尖は、波状の葉の背後にあるよく知られた力学によってではなく、それとは異なるMainardi-Codazzi-Peterson(MCP)incompatibilityという幾何学的フラストレーションによって形作られる。研究結果によると、この応力集中現象はバラの形を造形するだけでなく、フィードバックを返して花びらの成長の仕方にも影響を与えている。これは自然の力学に対する新たな洞察を与えるものであり、バイオインスパイアード材料の設計に着想をもたらす可能性がある。葉や花びらに見られる複雑な曲線やカールは多くの場合、自然の成長と幾何学との相互作用によって生じる。植物組織のような弾性の物質では、成長に伴い、物質の自然な幾何学的選好と物理的に可能なこととの間にミスマッチが起こり、幾何学的不適合として知られる固有応力が生じうる。これらの応力が蓄積するにつれて形状変化が起こる場合があり、このような作用はGauss incompatibilityとして知られている。これは葉や花びらの波打った縁などの特徴を説明するものである。しかし、バラの花びらの縁に沿って現れる独特の鋭くとがった尖は、他の多くの花で見られる柔らかな波状のパターンとは異なっており、従来のGauss incompatibilityでは説明できない特徴だ。
今回、Yafei Zhangらは、理論的解析と計算モデリング、人工ディスク花弁の実験的作製を組み合わせ、バラの花びらにおいて成長が誘導する力学的不安定性について研究した。その結果Zhangらは、バラの花びらの独特な形状はGauss incompatibilityに支配されているのではなく、Mainardi-Codazzi-Peterson(MCP)incompatibilityとして知られる独特な種類の幾何学的フラストレーションにより支配されていることを発見した。Gauss型ミスマッチから引き起こされる従来の形状変化とは異なり、このメカニズムでは非常に限局的な領域に応力が集中し、バラに見られるような鋭くはっきりした尖が現れる。さらに著者らは、花びらの尖における応力の極度な集中が周囲の組織の成長や形成の仕方に影響を与えていることを示し、生物学的成長と幾何学的制約そして機械的な力の間における強力なフィードバックループを明らかにした。「形成のメカニズムとしてMainardi-Codazzi-Peterson incompatibilityを特定することは、形態形成研究における重要なマイルストーンであるだけでなく、形状変化材料や形状変化構造の新たな設計に着想を与えるものでもある」と、関連するPerspectiveでQinghao CuiとLishuai Jinは述べている。「Gauss incompatibilityとMinardi-Codazzi-Peterson incompatibilityを組み合わせることで、これまでに見たこともない変形挙動が生じる可能性がある。」
Journal
Science
Article Title
Geometrically frustrated rose petals
Article Publication Date
1-May-2025