image: 開発した三次元マイクロ流路構造。毛細管現象を利用して熱いシリコンチップに水の薄膜を効率的に接触させ、水が気化してできた熱い水蒸気を流路中央に通すことで効率的かつ安定な冷却を実現している。 view more
Credit: 東京大学 生産技術研究所
スマートフォンやパソコン、データセンターなど、私たちの身の回りの電子機器や設備でますます小型化・高性能化が進んでいます。その一方で、小さな半導体チップから発生する熱は増加の一途をたどり、この熱をいかに効率よく取り除くかが大きな課題となっています。
東京大学 生産技術研究所の野村政宏教授らの研究チームは、シリコンチップに微細な水路(マイクロ流路)を形成し、その中を流れる水の気化熱を利用した高効率冷却技術を開発しました。この技術の最大の特徴は、「マニホールド構造」と呼ばれる分配構造と「キャピラリー構造」と呼ばれる毛細管現象を利用した構造を組み合わせたことにあります。これまでは、半導体チップの熱で生じた水蒸気が冷却水を壁面から遠ざけて効果的な冷却を妨げるとともに、動作を不安定にしていました。今回、この特殊な構造を使うことによって冷却水がうまく分配されるとともに、毛細管現象により冷却水が半導体チップに接触しやすくなることで、マイクロ流路に水を注入することで生じる圧力損失を従来の冷却方法と比べて62%も減らしながら、1cm²あたり700 W以上の放熱を実証しました。さらに、冷却性能を表す指標である「性能係数」が10万に達する世界最高レベルの冷却効率を達成しています。
Journal
Cell Reports Physical Science
Article Title
Chip cooling with manifold-capillary structures enables 105 COP in two-phase systems
Article Publication Date
7-Apr-2025