新しい研究によると、NASAの探査車キュリオシティが、古代の火星大気に関する隠された化学的記録を発見し、大量の二酸化炭素が火星の地殻に閉じ込められている可能性が示唆されたという。この研究結果は、古代の火星でかつて炭素循環が行われていたことを示す現場証拠であり、火星の過去の気候について新たな知見を提供するものである。火星の地形は、かつて液体の水が地表を流れていたことを明確に示しており、そのためには過去の火星は現在よりもはるかに温暖な気候でなければならない。したがって、温暖な状態を維持するために、過去の火星におけるCO2の大気は現在よりも厚かったはずだと考えられる。液体の水と大気中のCO2が豊富に存在する気候では、それらが火星の岩石と反応して、炭酸塩鉱物を生成するような惑星化学的作用が引き起こされたと予想される。しかし、以前の分析でも火星岩石から炭酸塩は検出されていたが、検出された量は惑星化学的モデルから予想される量よりも少なかった。
探査車キュリオシティのデータを用いて、Benjamin Tutoloらは、かつて古代湖があったゲール・クレーターの一部で炭酸塩鉱物を調査した。キュリオシティは2022年と2023年に、湖底から吹きさらしの環境へ移行したことを表すような、異なる層序単元から4つの岩石試料を掘削し、探査車に搭載されたX線回折計を用いてそれらの鉱物を分析した。Tutoloらは、硫酸マグネシウムに富んだ層内に、重量で約5~10%を超える高濃度の菱鉄鉱(炭酸鉄)を確認した。軌道からの測定では、これらの地層中に炭酸塩は検出されなかったため、これは予想外の結果であった。その出所と化学的性質から、著者らは、水と岩石が反応した後に水が蒸発して菱鉄鉱が形成されたと推測している。これは、CO2が火星大気から堆積岩へと化学的に隔離されたことを意味する。こういった硫酸塩層の鉱物組成が、火星中の硫酸塩に富む地域に典型的なものならば、そうした層には未確認の大きな炭素リザーバーがあることになる。炭酸塩はその後の作用で部分的に破壊されていることから、二酸化炭素の一部が後に大気中に戻り、炭素循環を形成していたことが示唆される。関連するPerspectiveではJanice BishopとMelissa Laneが、「火星周辺で行われた軌道からの調査や探査車による調査を通じて、惑星化学的な火星の詳細が明らかになるにつれ、居住できる可能性のある多様な環境について、さらなる手がかりが得られる」と述べている。
Journal
Science
Article Title
Carbonates identified by the Curiosity rover indicate a carbon cycle operated on ancient Mars
Article Publication Date
18-Apr-2025