image: 細菌の進化と酸素への適応:ゲノム、化石、化学データから作成した年表。色は酸素の状態を示している:青(嫌気性)、赤(好気性)、紫の濃淡(現代の細菌門における好気性系統の割合)。分析には、真核生物の化石データを活用するためにミトコンドリアと葉緑体を含んだ。時間の参照として陸上植物と動物を示した。 view more
Credit: Davín他(2025年)
地球上の生命の大部分を占めている微生物ですが、その誕生の歴史や進化をたどるのは至難の業です。なぜなら、微生物はほとんど化石化しないからです。そのため、微生物が最初に現れた正確な時期の特定は困難を極めてきました。一方で、古代の堆積物や岩石には、微生物の成長を支える栄養素の化学的痕跡が残されています。重要な転換点となったのは、約23億年前に大気中に酸素が蓄積されたときでした。本研究では、この酸素の急増とそれに伴い微生物がどのように適応したかに着目することで、バクテリア(細菌)の進化を解き明かしました。
このほど科学誌『Science』に発表した新たな研究で、沖縄科学技術大学院大学(OIST)モデルベース進化ゲノミクスユニットと海外の大学等研究機関の研究グループが、バクテリアの進化と酸素への適応に関する詳細な年表を作成しました。本研究の結果、一部のバクテリアは、光合成によって酸素を生成する能力を獲得するよりもずっと以前から、微量の酸素を利用していた可能性があることが示唆されました。
研究チームは、約23億年前に起こった「大酸化イベント(Great Oxidation Event、GOE)」に微生物がどのように反応したかに注目しました。この出来事は、シアノバクテリア(藍藻)による酸素発生型光合成の発達と炭素の堆積が主な要因となって引き起こされ、それまで酸素がほとんど存在していなかった地球の大気を、現在のように酸素が比較的豊富に存在する大気に根本的に変化させました。
この重要な転換が起こる前、最中、後におけるバクテリアの進化について、正確な時間軸を確定することは、化石の証拠が不完全であることや、最古の微生物群の年代測定が難しいことから、これまで困難でした。大多数の系統にとって唯一信頼できる最も古い時期は、月形成衝突の45億年前でした。なぜならこの衝突により地球は不毛の惑星となったと考えられているからです。
本研究では、地質学的記録とゲノム記録を同時に分析することで、この空白期に対処しました。研究チームが用いた革新的手法は、好気性(酸素を利用する)細菌のほとんどの系統が、化石や遺伝子が大酸化イベント以前の起源を強く示唆しない限りは、それより古い可能性は低いと仮定し、大酸化イベント自体を時間境界として使用するというものです。ベイズ統計学を用い、データがそれを裏付ける場合に、この仮定を無効にできるモデルを作成しました。
しかし、このアプローチでは、太古の昔に好気性であった系統について予測を行う必要があります。研究チームは、確率的手法を用い、古代のゲノムがどの遺伝子を含んでいるかを推測し、その後、機械学習を行い、酸素を使用していたかどうかを予測しました。化石記録を最大限に活用するために、研究チームは、α(アルファ)プロテオバクテリアから進化したミトコンドリアからなる真核生物の化石、およびシアノバクテリアから進化した葉緑体を調べ、好気性バクテリアの進化イベントがいつ起こったかをより正確に推定しました。
研究の結果、少なくとも三つの系統が大酸化イベント以前には好気的ライフスタイルを獲得していたことが示され、最も古いものでは大酸化イベントの9億年近く前のことになります。このことは、酸素を利用する能力が大気中に酸素が広く蓄積されるよりもはるか以前に進化していたことを示唆しています。このことは、好気的代謝が酸素発生型光合成の進化よりもずっと以前に起こっていた可能性があるという興味深い発見です。証拠によると、好気性への変化は光合成を行うシアノバクテリアの祖先で最も早く起こったことが示されており、微量の酸素を利用する能力が酸素発生型光合成の中心となる遺伝子を発達させた可能性が示されました。
本研究では、現存するすべての細菌の最後の共通祖先は、44億年から39億年前の冥王代または太古代初期に生息していたと推定しています。主要な細菌門の祖先は、25億年から18億年前の太古代および原生代に位置づけられていますが、多くの科は0.6~0.75億年前に遡り、陸上植物や動物門が誕生した時代と重なります。
気性生物の系統が嫌気性生物の系統よりも急速に多様化したことです。これは、酸素の存在がバクテリアの進化に大きな役割を果たしたことを示しています。
「ゲノムデータ、化石、地球化学的歴史を組み合わせたこのアプローチによって、特に化石記録のない微生物群の進化の時間軸がより明確になります」と、モデルベース進化ゲノミクスユニットを率いるゲルゲイ・ソローシ准教授は強調します。
「また、機械学習を用いて微生物のゲノムからその特徴をモデリングする手法は、好気的代謝の広がりを研究する上で有効であることが分かりました。さらに、地質学的な時間の中で、他の特徴がどのようにして現れ、地球の変化する環境と相互作用してきたかを解明する上でも、このアプローチは有用である可能性があります」とブリストル大学生命科学部のTom Williams博士は述べています。
Journal
Science
Method of Research
Computational simulation/modeling
Subject of Research
Cells
Article Title
A geological timescale for bacterial evolution and oxygen adaption
Article Publication Date
4-Apr-2025
COI Statement
The authors declare no competing interests.