News Release

同時多項目測定装置による新型コロナ変異ウイルスの新規検査法 〜ウイルスの進化に対応可能な新しい分子診断法〜

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

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A new, faster, and more cost-effective molecular diagnostic tool, Intelli-OVI, has been developed. It offers the potential for continuous monitoring of emerging SARS-CoV-2 variants and provides an opportunity for timely interventions to intercept transmission and prevent viral spread.

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Credit: Yorifumi Satou, Kumamoto University

 新型コロナウイルス感染症は、新たな変異ウイルスの出現のたびに、世界的流行を繰り返してきました。最近では、ワクチン接種や感染自体による集団免疫の獲得などの要因から、感染流行当初に比べれば重症化する症例は減少している傾向にあるものの、ウイルスは今現在も進化を続けている状況にあり、変異ウイルスのモニタリングは同感染症制御において重要と考えられます。これまでは、次世代シークエンスによりウイルス全ゲノム配列を決定し、流行している変異ウイルスが調べられてきましたが、同検査は高コストかつ多くの時間と手間を要するため、世界的に検査数は著しく減少しているのが現状です。そのような背景から、新型コロナ変異ウイルス対策、さらには次なるパンデミックへの備えのためにも、簡便かつ迅速な変異ウイルス検査法の開発が望まれています。

 Intelli-OVIは、新型コロナウイルスの既知及び新規の変異を迅速かつ簡便に検出する方法として開発されました。IntelliPlexシステムに用いられる試薬は、π Codeと呼ばれる表面にIDパターンを刻印した磁気マイクロディスクに、遺伝子測定用のDNAプローブを固定することで、検査対象の種類を特定し同時多項目測定を可能にする技術が活用されています( https://www.denka.co.jp/product/detail_00372/)。その新技術によって、理論上サンプル中に含まれるおよそ100カ所のウイルス変異配列を同時に測定する事ができます。

 OVIはIntelliPlexで得られた多項目データを元にして、様々な既知や未知の変異株を決定する計算プログラムです。本研究では、新しい変異ウイルスの出現に応じてDNAプローブを追加・変更する事によってIntelli-OVIをアップグレードする事が可能であり、最新版では35種類の異なるプローブを同時に使用し、20種類以上のSARS-CoV-2変異株を効率的に識別できることを実証しました。

 特記すべきは、新規変異ウイルスの出現時には異常な検査結果パターンを示したことから、既知の変異ウイルスだけでなく、新規変異株の出現を迅速かつ簡便に検出できる可能性を示したことです。このことは2 −3 種類という限られた標的変異を調べる従来のqPCR法では困難なことであることから、この新手法の大きな利点と考えられます。

 本研究の結果は、新型コロナウイルスの例を用いて、Intelli-OVIが迅速に進化するウイルスに対応できることを示しており、将来のパンデミックウイルスなど様々なウイルス感染症の診断ツールへの応用が期待されます。今後も、この新世代分子診断ツールが新たな新興再興ウイルスの出現時への備えとなり安心安全な社会実現を目指して、更なる研究開発を行います。


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