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ストレス暴露後のクロマチン制御による造血幹細胞機能と造血の回復

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

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Chromatin modifier Hmga2 promotes adult hematopoietic stem cell function and blood regeneration in stress conditions

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Credit: Goro Sashida, Kumamoto University

[背景]
 人が感染症や抗がん剤などの薬剤に暴露されると、早い時期に赤血球や血小板といった血液細胞は減少します。こうしたストレスによる造血障害からの回復には、骨髄にいる造血幹細胞が欠かせません。一般的に、ストレスに暴露されると、造血幹細胞は増殖するだけでなく、分化して血液細胞の産生を進めますが、その機序は完全に明らかにはなっていません。今回の研究では、クロマチンを制御する因子の一つであるHmga2が、造血幹細胞のストレス応答を制御して、造血の回復を促す仕組みを明らかにしました。

[研究の内容]
 今回の研究では、非常に増殖する胎児の造血幹細胞で高く発現している Hmga2遺伝子に着目しました。Hmga2はDNAに結合するだけでなく、クロマチン構造を開いて、標的遺伝子の発現を活性化する機能が知られていました。胎児に比べて、成人の造血幹細胞では、Hmga2の発現は低下しています。そこで、本研究グループでは、Hmga2の高発現を誘導できるコンディショナルノックインマウスと、Hmga2遺伝子を欠損できるコンディショナルノックアウトマウスを作製しました。これらの遺伝子改変マウスを用いて、ストレスのない定常状態と、抗がん剤や炎症性サイトカインに暴露されたストレス状況での造血幹細胞の細胞機能とHmga2の作用機序を解析しました。

[成果]
 今回の研究で、定常状態においては、Hmga2は、成体の造血幹細胞や造血にとって不可欠でないことがわかりました。一方で、抗がん剤投与などのストレス状況では、造血幹細胞や造血の回復を速やかに進めることがわかりました。その仕組みとして、造血幹細胞が、TNF-aといった炎症性サイトカインに暴露されると、細胞内でカゼインキナーゼ(CK2)によって、Hmga2タンパクがリン酸化されます。このリン酸化によって、炎症応答を抑えるようにクロマチンに結合して、炎症関連転写因子の機能を抑制しました。一方、造血幹細胞の増殖(自己複製)や血小板の産生を進めるためのHmga2のクロマチンヘの結合や遺伝子発現の活性化には、Hmga2のリン酸化は関わっていませんでした。

[展開]
 今回遺伝子改変マウスでわかった造血幹細胞のHrnga2によるストレス応答機序を応用することで、ヒトの重症感染症やがん治療後の造血不全状態に対して、速やかに造血を回復する治療法開発が期待されます。

[用語解説]
*クロマチン:DNAとヒストンタンパクの複合体


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